若者のクルマ離れはいつから?市場構造から「兆候」を見つける

若者のクルマ離れと言う言葉を聞くようになって大分経ちますが、いつごろか聞かれるようになったのでしょうか?記憶を思い起こすと、2005年ごろからだった様な気がします。若者の興味の対象は、クルマから「スマホやゲーム」「アニメやアイドルなどのサブカルチャー」「モノ消費からコト消費」などに移って行き、今ではクルマの免許さえ持っていない若者も増えています。

1、若者のクルマ変遷

昔の若者(概ね1970~80年代に、二十歳前後だった男性)は、友達との会話はクルマの話ばかりで、クルマを手に入れて彼女とドライブに行くのが夢でした。
そのイメージを定着させたのは、やはりケンとメリーのスカイラインではないでしょうか。そしてセリカが追随し、1970年代は2ドアのスペシャリティカーが台頭しました。
<ケンとメリーのスカイライン>
ケンとメリーのスカイライン
<セリカ>
セリカ
1980年代は、サーフィンの流行と共にちょっとシャレた赤のファミリア、マークⅡ/チェイサー/クレスタ三姉妹のハイソカーブーム、そして「私をスキーに連れてって」で爆発的スキーブームの中ハイラックスサーフやレガシー等のRV車が人気となりました。プレリュードやシルビア、セリカ等の2ドアスペシャリティカーも引き続き人気があり、1980年代は若者のクルマ文化が最も華やかな時代だったと思います。
<ファミリア>
ファミリア
<マークⅡ>
マーク2
<ハイラックスサーフ>
ハイラックスサーフ
<プレリュード>
プレリュード
1990年代は、バブル崩壊により経済の低迷、バブル期に開発されたスカイラインGT-R(R32)、NSX、RXー7(FD)などのモンスターマシンは、若者にとって憧れのクルマではあるものの実際に購入するクルマは、手頃なミニバンであるSーMX、ライト感覚で使えるSUVのCRーV、かつてオジさんクルマとして敬遠されていたカローラ(若者に好まれたのはワゴンですが)など、これまでの若者の様に、給料の多くをクルマに費やすことはせず、身の丈にあったクルマ選びをするようになります。
また、走りを軸とした付加価値(高性能エンジン搭載によるハイスピード、高性能4WD搭載による高い走破性能)に対する欲求は徐々に薄くなり、ユーティリティにシフトしていきます。
<スカイライン GT-R>
スカイラインGT-R
<S-MX>
S-MX
<CR-V>
CR-V
そして、1990年代後半から「自分のクルマは持たずに、必要な時に親のクルマを借りる」「彼女とは地元のカラオケBOXで過ごす」など徐々に若者のクルマ離れが始まります。
このころの若者のアンケート調査では、欲しい物のランクに相変わらずクルマはありましたが、ゲーム、パソコン、携帯電話などクルマ以外にも興味関心の高い物があり、相対的なクルマの位置付けは下がりつつありました。
しかし、冒頭でも書きましたが、若者のクルマ離れが言われ始めたのは2005年頃ですから、知覚(認知)されるまでは5年以上のタイムラグがあります。
若者の行動

2、20代(若者)の人口推移

下記の図は、20代(若者)の人口推移を、5年ピッチで示したものです。
1990年は新人類世代が20代で、20代の人口は169万人でしたが、1995年には団塊Jr世代が20代となり、20代の人口は187万人に増加しました。2000年は、団塊Jr世代が20代後半となり、20代前半は少子化世代が参入し、20代の人口は若干減少し182万人となりました。2005年は少子化世代が20代となり、20代の人口は156万人に減少し、その後も減少傾向にあります。

20代(若者)の人口

3、20代若者のクルマ購入率と人口、クルマ購入者数(需要に占める比率)の関係

20代若者のクルマ購入率(人口当たりのクルマ販売台数)の低下は、90年代後半からその兆候は見られました。しかし、2000年前半までは団塊Jr世代を中心に20代若者の人口が多く、クルマ購入率は下がりつつもクルマ購入者数は比較的多かった為、「若者がクルマを買わなくなった」と言った知覚(認知)は感じられませんでした。
その後、2000年代半ば以降、20代若者の人口が急激に減少し、クルマ購入率も更に低下した為、クルマ購入者数(需要に占める比率)は大きく減少します。ここで「若者のクルマ離れ」が知覚(認知)されることになります。

20代(若者)のクルマ購入率

4、まとめ

以上、若者のクルマ離れがいつから起きたかご説明致しましたが、世の中の現象を表層的に捉えていては、市場の変化に気づくのが遅くなってしまいます。市場の構造を分析し、兆候を見つけることが大事です。逆に兆候に気づけば、他の人よりも先に将来を予測できますし、そこにビジネスチャンスを見つける事が出来ます
ロジカルに将来を予測し、それに対しどの様な対応をとるか、マーケティングの重要な要素です。

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