新生トヨタ・クラウンついに発表!世界のクラウンへ
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2022年7月15 日にかねてから噂のトヨタ・クラウンの第16代目の発表が行われました。
クラウンの次期車に関して次期車は無い、セダンではなくなる等々様々な情報が飛び交っておりました。
憧れのセダンの象徴だったクラウン
クラウンは1955年1月に登場しました。
発売以来トヨタチャンネルの最高級車としてまた日本のセダンのリーダーとしての位置を守り続けてきました。
「いつかはクラウン」
という広告のうたい文句そのままに団塊の世代にとっては憧れのセダンでした。そして基本的には日本専用車(中国での生産も行われている)として時代と共に大きく高級になってきました。それでも日本での使い易さを守るために永く日本の5ナンバー枠(全長4700mm全幅1700mm)のサイズを守ってきましたし、日本車が国際競争力を保つために大型化していく中においても全幅1800mmをキープして最小回転半径も5.3mを守っていました。しかし1980年度には24万台近くを販売したものが2001年度には約8万台に、現行車の発売された2018年度には約6万台にまで販売台数を減らし、2021年度は2万台を切るまで台数を減らしました。
これでは新しくフルモデルチェンジのクラウンを開発するわけにはいきません。一つの車種を開発するには数百億円という巨額の費用が必要となります。販売台数が確保できない車種にそれだけの巨額な費用はかけれません。しかし、トヨタの看板車種であり発売以来65年以上続く車種をそう簡単に止める訳にもいきません。
その長い歴史故に大きな変更をするには勇気が必要ですし、社としてのコンセンサスが必要となります。
そういう社内の葛藤と入念な調査・検討に基づく大胆な企画が決定されたものと思います。そして誰もが驚く世界展開と4つのボディタイプで構成される新生クラウンになったのだと推測します。
世界で戦えるクラウンに
新生クラウンは今までの考え方を一蹴しました。
世界に打って出ざるを得ない状況下において従来の日本国内専用のやり方では通用しません。
世界的にはクラウンの属するセグメントはEセグメントでありベンツの主力車種EクラスそしてBMWの主力車種5シリーズなどがあります。それらは世界の名車であり長い歴史に裏打ちされたブランド力があります。
それらと対抗するにはいくら日本のセダンの王者であるクラウンと言えどもまともな戦いでは勝ち目はありません。現代は世界的にSUVが全盛の時代です。新生クラウンの4つの車種の一つであるオーソドックスなセダンではないクロスオーバー車を世界に先駆けて開発し登場させるというのは実に巧妙な作戦だと思います。
この考えは保守的な日本の既存クラウンユーザーや欧州のユーザーには歓迎されにくいでしょうが話題にはなりますし新しい考え方のオピニオンリーダーには受け入れられると考えます。
今回の新生クラウンは前輪駆動のエンジン横置きが基本レイアウトです。
それは既にカムリやRXにも採用されているTMGA-Kという基本アーキテクチャーです。この車の開発に当たっては社内での部品共有、PQ(感性品質)レベルの確保、静粛性、乗り心地等においてトヨタチャンネル最高級車に相応しいレベルにすることが大変だったと思います。
そのサイズは最初に投入されるクロスオーバーでは全長4,930mm全幅1,840mm全高1,540mmホイールベースは2,850mmで現行車に比べてそれぞれ+20mm,+40mm,+85mm,▲70mm(ホイールベースが短かくなったのは前述の基本レイアウトが前輪駆動のエンジン横置きによるもので実質的な室内空間への影響は無いと思われます)です。Eセグメントの車としては標準的なサイズですが日本での使用にはいささか大きいかも知れません。クロスオーバーという車ゆえタイヤサイズが21インチという大径タイヤを採用しています。この大径タイヤと前輪駆動のエンジン横置きレイアウトでは最小回転半径が大きくなってしまいます。それもあって全幅を40mm拡げたのだと思います。しかしながらそれでも先代の5.3mにはまだ及ばずに後輪ステアも採用しました。結果5.4mというこのサイズの車としては優れたものになりました。この最小回転半径は日本で使用する際には重要なことですがあまり語られることのないものです。日本のユーザーをよく理解しているトヨタならではの配慮だと思いました。
それ以外に前輪駆動のエンジン横置きレイアウトが問題になることは実際の使用面ではほとんどないと思われます。この車は一見ファストバックのリヤハッチタイプのデザインに見えますが実際はトランクタイプのものになっています。そのあたりも仕向け地展開を考慮した結果だと思われます。
このクロスオーバーが各仕向け地でどのような評価を受けるかは難しいところです。主要仕向け地の一つである中国においては良い評価を得られると思いますが欧米においては未知数です。
次世代へ向けての挑戦は差別化がカギ
この新生クラウンにはこのクロスオーバー以外に4ドアハッチバックのスポーツ
・4ドアセダン
そして4ドアエステート
というボディタイプが用意されており順次発売されるとのことです。
これらのボディタイプにおいて4ドアスポーツはこのセグメントの車としては性格が曖昧だと思います。4ドアセダンは既存ユーザー向けのものでしょうがすぐ下にカムリが存在することを考えるとグローバルでは差別化が課題になると思われます。その点、4ドアエステートは機能的なSUVということで新しい試みでありアクティブライフ指向のユーザーには歓迎されるものと思われます。
大英断を持って開発された16代目のクラウンは日本のクラウンから世界のクラウンへと大きく羽ばたき年当たり20万台の販売を目指すわけでクラウンの終わりでなく次の世代へ向けてのEV化展開も考慮したトヨタの挑戦であると言える車だと思います。
(ライター:栗原信一)