【タフト試乗インプレッション】質感/装備/機能/走行性能などを徹底調査
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前回タフトのデスクリサーチ編をお届けしましたが、今回はタフトのインプレッション編です。評価対象車種はGターボの2WDで、豊富なオプションが装着されています。前回と同様に自動車ジャーナリスト栗原信一氏と共に、CRC独自の視点でタフトの魅力を多面的に徹底研究したいと思います。
栗原信一略歴
1972年三菱自動車に入社。商品企画部にて商品戦略・企画に従事。3代目ギャランの企画担当と8代目ギャランの商品企画を担当。その後、モータースポーツと初代アウトランダー、ランサーエボリューションX、デリカD:5の開発の指揮を執る。三菱自動車ノースアメリカの社長も経験。日産自動車と三菱自動車との軽自動車事業における合弁会社NMKV副社長を経て2014年退社。
1、エクステリア
まずは、エクステリアの4つの魅力点をお伝えします。
エクステリアは、全体的にスクエアなデザインで纏まっています。サイドのキャラクターラインは控えめで、ホイールアーチに付けたフェンダーガーニッシュやバンパーなどにより、力強さや悪路走破性等のSUVテイストを表現しています。
ヘッドランプも四角い形状で統一感を持たせてますが、メッキを施したインナーベゼル、上下二分割のハウジング(下段:ロービーム、上段:ハイビーム)、3分割にデザインされたポジションランプ&フロントターンランプなど、凝ったデザインになっています。
また、先行車や対向車を検知し部分的に遮光するアダプティブドライビングビームや、ハンドルを切った方向やターンランプを出した方向を明るく照らすサイドビューランプなどの機能性もあり、デザイン特徴と機能が凝縮されています。
リヤコンビランプは、ヘッドランプのデザインイメージを踏襲し、統一感を感じます。(3分割にデザインされた部分は、フロントはポジションランプ&フロントターンランプ、リヤがテールランプ&ストップランプ)
また、フロントのフォグランプ周りと、リヤのリフレクター周りに於いて、統一したデザインを施している点も注目されます。
次の魅力点は、フロントバンパーの切り欠き形状です。ラギッドなイメージとリフトアップ感が上手く表現されています。
通常この様な形状は、タイヤハウスに空気が流れ込んでしまう為 空力的に不利ですが、性能を落とさずに実現できたとの事です。
また、リヤの大型フェンダーガーニッシュも、足回りの力強さを表現すると共に、サイドの間延び感が無いように上手くデザインされています。
2、インテリア
インテリアについては、2つの魅力点と2つの残念な点を紹介します。
インパネデザインは、黒を基調に直線的ラインで構成されています。メーター、エアコン吹き出し口、シフト廻りにあるオレンジメタリックの加飾が目を引きますが、統一感に欠ける印象です。また、色の選択肢が無い為、好みが分かれるかも知れません。
インフォメーション関連は、インパネ中央部にナビやオーディオ、パノラマモニターを表示する9インチディスプレイが有り、エンジン始動時には、タフトの画像が表示されます(なお、今回の試乗車はスマホ連携ディスプレィオーディオではないため、スマホとの連携機能は無し)。また、メーター内の中央には、マルチインフォメーションディスプレィがあります。
<9インチディスプレイの表示内容>
<マルチインフォメーションディスプレィの表示内容>
空調操作パネルは、タントからの流用ですが、コンパクトなサイズで上手く収まっています。
室内は、クルースペース(前席廻り)とフレキシブルスペース(後席/荷室廻り)の2つに分け、それぞれ特徴付けされています。
クルースペースは、インパネ、シート、ドアトリムをブラック基調とし、フレキシブルスペースは、シート、ドアトリム、荷室をグレー基調として色分けしています。
また、前席と後席ではドアトリムのデザインを変更してます。後席ドアトリムはラッゲージルームとしての意味合いが強く、太い横桟基調で頑丈なイメージにし、アームレストが無く、インナードアハンドルやパワーウィンドスイッチは、黒の原着としています。この様な割り切りは、コンセプトが明確に伝わり好感が持てます。
しかし、前席ドアトリムのアームレストの分割ラインが目立つ点は、質感を損ない少し残念です。
フロアコンソールは、スマホ置き場として、高さや大きさが使い易く設計されています。またディーラーオプションで、ワイヤレス充電器が取り付けられます。サイドウォークスルーとのトレードオフになりますが、スマホの使い勝手の良さは魅力です。
センターアームレストは、リッドがあり中は小物入れとなっています。
3、シートとパッケージング
シートとパッケージングについては、3つの魅力点と1つの残念な点を紹介します。
前席はスポーティなデザインで、ホールド性も良好です。
後席は十分な広さがありますが、足元はフロアトンネルの段差が大きく、また前席シート取り付け部の出っ張りが大きい為、窮屈に感じます。
後席シートアレンジは、シートバックが倒れるだけのシンプルな機構(左右分割可倒機構)で、操作も簡単です。防汚タイプのフラットな荷室となり、後席ドアとの隙間を無くす工夫も有ります。しかし前席とは隙間があり、その分前後方向(奥行き)は短いです。
軽自動車では一般的になっている後席スライド機構を採用せず、この様に荷室として特徴付けしている点は、フレキシブルスペースの狙いが伝わります。
4、走行性能
走行性能については、3つの魅力点と1つの残念な点を紹介します。
今回も大人(男性)3人乗車で、1人乗車と比べると約130Kg重い状況でしたが、ターボエンジンとD-CVTにより、一般道での出足加速、高速道路での加速共に、CVT特有のラバーフィールを全く感じさせないリニアな走りをしてくれ実に素晴らしいと感じました。
コーナーリング性能は、ガラスサンルーフによる重心高のアップや扁平率65%のタイヤ装着により、不利な要素があるものの、高いボディ剛性と粘りのある足回りで、ロールが上手くコントロールされ不安を感じることはありませんでした。
この様に、ドライバーの意に沿った動きをしてくれるので、Fun to Driveを味わえます。
また、乗り心地は扁平率65%のタイヤとも相まって全般に良いと感じました。
NVH(Noise、Vibration、Harshness)も、とても良好です。前席のノイズは抑えられている印象で、また高速道路の継ぎ目も上手く衝撃を吸収してくれるので、高速走行に於いても快適なドライブが楽しめます。
1つ残念な点は、標識の認識機能です。
本来この認識機能は車の進行方向の標識を認識する機能ですが、都内の様な複雑な道では、進行方向と交差する横道の道路標識をも認識してしまう事があり、認識した際の表示もナビ画面に大きく表示されるため気になりました。
5、注目装備
(1)アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車体逸脱抑制制御機能
軽自動車にもオプション設定が一般的になって来ている便利装備です。しかし、以前ご紹介したeKクロス、ハスラーと同様に発展途上であり、「スムーズな加速/減速」、「作動ON/OFFを分かり易く伝える工夫」、「ブレーキが動作している時の表示機能追加(ドライバーにブレーキランプが点灯している事を知らせる)」など一層の改良が望まれます。
(2)スマートパノラマパーキングアシスト
2019年7月に発売されたタントに採用され、タフトも同様にメーカープション設定されています。この機能を使うと、駐車スペースにスムーズに駐車できます。
操作方法は、
①駐車したい白線のあるスペースの横で停車し、スイッチを長押しする。
②駐車したい場所を検知したら「はい」を押す。
③音声案内に従って、シフトレバーとアクセル/ブレーキを操作する。ハンドルは自動で回ります。
駐車(含む縦列駐車)が苦手な方には、追加オプションで71,500円は、魅力に思いました。
(3)スカイフィールトップ(シェ―ド付き固定式ガラスルーフ)
スカイフィールトップは、全グレード標準装備されています。開放感と共に視界が広がる点は、機能性も感じます。
ガラスサンルーフは、コスト/重量アップしユーザーニーズも分かれる為、通常オプション設定ですが、コンセプトを訴求する為に標準装備とした点は、強い意志を感じますし、狙い通りになっているのではないでしょうか。
(4)キーフリーシステム&ウエルカムドアロック解除
キーフリーシステム(スマートキー)は、既に軽自動車でも一般的な装備ですが、ウエルカムドアロック解除(クルマに近づくとドアロックが解錠され、そのままスムーズに乗り込める)は、ダイハツ及びトヨタの特徴装備です。
なお、ドアロック機能は、フューエルリッドのロックと連動している為、フューエルリッドオープナーが無く、リッドを直接押す事で開閉できます。
(5)樹脂製テールゲート
軽量化を狙い、タントと同様にテールゲートは、アウター/インナーパネル共に樹脂を採用しています。コストアップにはなりますが、ゲートの開閉が軽く女性ユーザーには歓迎されるでしょう。
6、纏め
タフトの一番の魅力は、作り手側の意図が明確に伝わってくる点です。
コンセプトを具現化する為に、機能や装備を追加するだけではなく、通常有るものを削る事でメリハリをつけ、コンセプトを際立たせています。
後席にスライド機構やドアアームレストを付け、ドアトリムの加飾等を施していたら、狙いであるクルースペースとフレキシブルスペースは、ぼやけてしまったと思います。
他車に有る機能や装備を削る事は、商品力の低下に繋がる可能性があり、実に難しい勇気のいる事ですが、トレードオフの関係がしっかりと整理できている印象です。
そしてこれらを削る一方、スカイフィールトップや電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機構等を全グレード標準装備としつつ、ハスラーを意識し若干安くしている点は、戦略的な価格設定を感じます。
もう1点、ダイハツの長期商品戦略につても触れておきたいと思います。
ダイハツは、これまで4年サイクルでFMC(フルモデルチェンジ)してきたムーヴを2年以上遅らせ、需要が拡大しているスーパーハイトワゴンタイプのタントを逆に1年早め(6年→5年)、キャストは5年以上経つもののFMCをせず、需要拡大の可能性があるSUV(CUV)タイプのタフトを新規投入しています。限られたリソースの中でFMCのタイミングを見直し、市場ニーズをしっかりと捉えた戦略が立てられていると思います。
以上、タフトを徹底研究してみましたが、皆さんも是非実際に「見て、乗って、触って」みてください。クルマの魅力が伝わって来ます。
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